生理中に台所に入っただけで怒られた——そんな経験を持つインド人女性は、今も少なくありません。

インドでは多くの家庭で、生理中の女性は「神聖な場所」に入ってはいけないとされています。お寺、家の祈りの場、そして台所。その理由として「不浄だから」と言われる。でも、もともとこのルールには別の意味があったんです。

インド出身の私(シワニ)が、インドの月経タブーについて正直に話します。

生理中に「触れてはいけないもの」——インドで育った私の体験

インドでは宗教が生活に深く溶け込んでいます。そのため、月経に関するルールも宗教と切り離せません。

多くの家庭で、生理中の女性には以下のような制限があります。ただし、これらすべてが当てはまるわけではなく、家庭や地域によって大きく異なります。

  • お寺への立ち入り禁止
  • 家庭内の祈りの場(プジャルーム)への立ち入り禁止
  • 台所への立ち入り禁止または制限
  • 宗教行事・儀式への参加禁止
  • 特定の食べ物や物への接触禁止

2022年にマハーラーシュトラ州ナーグプル県の部族地域で行われた調査(寄宿学校に通う10〜19歳の女子290人が対象)では、97.93%が「生理中に宗教行事への参加を禁じられている」と答えています。

私自身はマハーラーシュトラ州で育ちましたが、「これは守りなさい」と厳しく言われるような家庭ではありませんでした。でも、「生理中にお寺に行かない」というのは、自然に意識していました。

宗教行事やお祭りと生理が重なってしまったとき、インドでは生理を数日遅らせるための薬が市販されています。私自身も使ったことがあります。

もともとは「体を休めさせる配慮」だった——タブーの起源

このルールがどこから来たのか。実は、もともとの意味はまったく違ったものでした。

「生理中は体が疲れているから、無理をせずに休んでほしい」——これが出発点だったと言われています。

お寺は「エネルギーが非常に強い場所」とされているので、体が弱っているときに行くと負担がかかってしまうという考え方。台所に入らなくていいのも、「休んでいなさい」というサポートの表れで、家族がご飯を運んでくれることもあったそうです。

でも、いつの間にかその意味が変わってしまいました。「休ませてあげたい」が「不浄だから近づくな」に。女性を守るためのルールが、女性を排除するルールに変わっていったんです。

本来は体を休めるためだったはずの配慮が、「不浄だから離れていなさい」という差別的なルールになってしまったのは、すごく悲しいことだと思います。

生理を理由に学校を辞める女の子たち

タブーは体だけでなく、教育の機会にも影響しています。

インドのNGOの報告書によると、女子は生理への対処ができないために月に平均6日学校を休み、約23%が思春期を機に中退しているとされています。生理用品が手に入らない、学校にトイレがない、「生理中は外に出てはいけない」という家庭の価値観——これらが重なって、毎月数日欠席せざるを得ない状況が生まれます。

さらに、インド各地の研究をまとめた分析では、初経の前に生理について知らされていた女の子は約半数にとどまっています。突然始まった生理に「これは何の病気だ」と怖い思いをした女の子がたくさんいます。

生理用品へのアクセスも大きな課題です。インド政府の全国家族健康調査によると、15〜24歳の女性のうち衛生的な生理用品を使っている人は、2015〜16年の57.6%から2019〜21年には77.3%まで増えました。それでも、約半数が今も布を使っていると答えていて、農村部や貧しい家庭ほどその割合は高くなります。私自身も、子どものころは布を使っていました。適切な衛生管理ができないことで生殖器感染症のリスクが高まることは、複数の医学研究が示しています。

変わりはじめたインド——生理税廃止と若い世代の声

でも、変化は起きています。

2017年にインドで消費税(GST)が導入された際、サニタリーパッドに12%の税率が設定されました。「生理は選択じゃない。贅沢品じゃない」と女性活動家や著名人が声を上げ、1年間の運動の末、2018年にGST完全免除(0%)を勝ち取りました。

映画の力も大きかったです。2018年公開の短編ドキュメンタリー映画『Period. End of Sentence.』は、農村の女性たちが安価な生理用品を自製・販売する姿を追った作品で、第91回アカデミー賞(2019年)短編ドキュメンタリー賞を受賞。Netflixでも配信され、インドの月経タブーが世界に知られるきっかけになりました。

都市部の若い世代では、宗教的なルールをそのまま受け入れない人が増えています。インターネットやSNSを通じて情報にアクセスできるようになり、「なぜ生理中に台所に入ってはいけないのか」「それは根拠のある話なのか」と疑問を持つ若者が出てきました。

完全になくなるにはまだ時間がかかります。でも、タブーについて話せる空気が少しずつ生まれてきていることは、確かです。

よくある質問(FAQ)

Q. インドのすべての家庭で生理中に制限がありますか?

A. いいえ、家庭や地域によって大きく異なります。都市部の教育水準が高い家庭では制限がほとんどない場合もあります。ただ、都会だからといって必ずしもないわけでもありません。私の友人の家では、生理中にバルコニーにベッドを置いてそこで過ごすように言われていました。一方、農村部や宗教的な慣習が強く残る地域では今も厳しい制限があります。同じインドでも、地域・家庭・世代によって実態は様々です。

Q. インドで生理用品は手に入りますか?

A. 都市部のスーパーやドラッグストアでは入手できます。2018年にGST(消費税)が撤廃されたことで以前より入手しやすくなりましたが、地方では流通が限られているため、今も布を代用している女性が多くいます。政府も学校などを通じた無料配布プログラムを進めています。

Q. 日本の生理タブーとインドはどう違いますか?

A. 日本でも神道の「穢れ(気枯れ)」という概念から、生理中の女性が神聖な場所に近づかない方がよいとする考え方が歴史的に存在しました。ただし現在、神社本庁は「生理は穢れではなく、参拝を遠慮する必要はない」という公式見解を示しており、制限は実質的に解消されています。一方インドでは今も家庭や地域のルールとして実生活に影響している場合が多く、「歴史的な構造は似ているが、現在の日常生活への影響度が大きく違う」といえます。


この記事のもとになった本を読む

インド人の結婚観・お金観・仕事観・食文化・日常の習慣まで、日本在住8年のシワニが書き下ろした初の著書です。

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この記事はシワニの著書『ぶっとび!人生が踊るインド・メンタル あらゆる悩みを3秒で吹き飛ばす最強哲学』(KADOKAWA)の内容をもとに、シワニが再構成しました。

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