インドの主要新聞に掲載された「花婿募集」の婚活広告50件を調査した研究がある。そのうち42件——84%——で、女性の家族側が「うちの娘は色白である」と自らアピールしていた。
日本に来て8年、インド出身の私(シワニ)が、インド社会にある3つの差別についてお話しします。「インド=差別が多い国」と言いたいわけではありません。どこの社会にも差別はある。でも、正確に知ってほしいと思っています。
① カラーリズム——「白い肌」が条件になる社会
カラーリズムとは、同じ民族・同じ国籍の中で、肌の色によって人を差別することです。人種差別とは違います。人種差別は「〇〇人だから」という話ですが、カラーリズムは「同じインド人の中で、肌が白い方が上」という価値観です。
インドは地域や民族によって肌の色が豊かな国です。同じ家族でも全員の肌色が違う、ということも普通にあります。私の姉は私より少し肌が濃い。そんな姉が生まれたとき、親戚に言われた言葉があります。「この子は持参金がかかるね」——肌が濃いから、結婚の時に花嫁側がより多く払わなければならないという意味です。
実際、インドの婚活市場でこれは今も現実の問題です。結婚相手を探す「バイオデータ(婚活履歴書)」には、名前・年収・学歴と並んで肌の色が記載されることがあります。インドのお見合い結婚における肌色バイアスを調べた研究では、婚活プロフィールの評価において肌の色が明確に有利・不利を左右することが示されています(ただし、これはインド全体を代表するサンプルではありません)。
芸能界も同様です。ボリウッドでは今も肌の色が薄い女優が主役を担いやすく、一方でダークスキンの女優が主役を演じる際に肌を人工的に白くして撮影するという逆説的な慣行すら存在します。2019年の映画『Bala』では、肌色差別を受ける女性役に肌を褐色に塗った色白の女優が起用され、「なぜダークスキンの女優を使わないのか」と批判を浴びました。
この問題は変化しつつあります。長年インドで最も売れた美白クリーム「フェア&ラブリー」は、2020年にBLM運動などが世界的に高まる中で批判を受け、「グロウ&ラブリー」に改名しました(※ 名前を変えただけで商品自体は変わっていないという批判もあります)。「なんで私の肌の色が美しくないとされるの?」と声を上げる若い世代も増えています。完全になくなったとは言えませんが、少しずつ変わっています。
② 北東インド出身者への差別——同じインド人なのに「インド人扱い」されない
インドの北東部——アッサム、マニプル、アルナーチャル・プラデーシュなどの州——には、東アジア系の顔立ちを持つ人々が多く住んでいます。国籍はインド人ですが、見た目が「一般的にイメージされるインド人」とは異なります。この「顔が違う」という理由だけで差別を受けることがあります。
「中国人だろ」「チンキ(chinki)」と呼ばれる。「チンキ」とは、主に中国人・日本人・韓国人など東アジア系の人々、またはそれに似た容姿(アジア系の目元など)を持つ人々に向けて使われる極めて侮辱的な蔑称です。インド人なのに国籍そのものを否定される。北東出身の女性に対しては、性的な偏見に基づいた侮辱的な発言が向けられるケースもあります。
この問題が大きく注目されたのは、2014年1月の事件です。アルナーチャル・プラデーシュ州出身の大学生、Nido Taniam(当時19〜20歳)がデリーの市場で集団暴行を受け死亡しました。発端は、店主たちが彼の東アジア系の外見をからかい「chinki」と呼んだことでした。被害者の父は同州の州議会議員でした。この事件後、デリーで北東出身の若者たちが大規模デモを起こし、政府はBezbaruah委員会を設置して実態調査と対策勧告を行いました。
委員会は人種的侮辱を犯罪化する法律の新設などを勧告しましたが、その多くは2026年現在も実施されていません。インドには特定の人種差別を禁止した専門法がまだ存在しません。
COVID-19の流行期(2020年)には「中国ウイルスを持ってきた」として北東出身者への嫌がらせが激増し、アパートから退去を迫られるケースなども報告されました。「チンキ」という差別語に加え、「コロナ」という新たな侮辱語が生まれました。
インドがどれだけ多様な人々で構成されているか——インド人自身もまだ十分に理解できていない部分があります。国籍がインドであれば、どんな顔立ちであってもインド人です。それだけのことです。
③ カーストによる差別——1950年に禁止されたのに、なぜ今も残るのか
カースト制度について、ピラミッドの絵を見たことがある方は多いと思います。バラモン(聖職者)、クシャトリヤ(武士・王族)、ヴァイシャ(商人)、シュードラ(労働者)——その4段階。ただ、実際にはこのピラミッドの外にいる「ダリット」と呼ばれる人々がいます。かつて「不可触民」と呼ばれ、触れるだけで「穢れ」とされた人たちです。さらに、このカテゴリーの中にも「ジャティ(サブカースト)」があり、実態はピラミッド1枚では到底表せないほど複雑な構造です。
カースト差別はインドの憲法で1950年に禁止されています。それでも消えないのはなぜか。
差別は法律で消えるものではないからです。長年にわたって教育を受けられず、貧困の連鎖の中にいた人々は、禁止になった翌日から急に条件が整うわけではありません。今日の仕事をしないと明日食べられない状況では子どもを学校に通わせることができず、子どもも同じ仕事しかできない——このループが今もあります。現在のインドでは、どのカーストの人間でも制度上はどんな仕事にもつけます。でも、「つける」と「つける条件を持てる」は違います。
私が直接感じた瞬間があります。父が体調を崩し、介護士の方が毎日来てくれるようになりました。その50代の女性が、ある日こう言ったんです。「こんなに親切にしてもらったのは初めてです」と。私たちは特別なことをしていませんでした。一緒にご飯を食べたり、「今日は何持ってきたの?」と話しかけたり、ただそれだけ。でも彼女は、前に働いた家では冷蔵庫に触ることも、決まった場所以外に座ることも許されなかったと言いました。都会の、教育を受けた家庭でのことです。
「なんで当たり前のことが、褒めるレベルになっているの?」——その言葉が今も頭に残っています。
現在のインドには、差別を受けた人々のために大学・公務員採用の一定枠を確保する「留保制度(Reservation)」があります。指定カースト15%、指定部族7.5%、その他後進階層27%——合計49.5%が留保枠です。「頑張ったのに入れなかった」「あの人はカーストのおかげで入れた」という不満の声もあります。一方で、制度がなければ差別はもっと固定化される。簡単に答えの出ない問題です。
今の若い世代には「カースト差別をなくそう」という声が確かに上がっています。SNSで視野が広がり、「なぜ生まれた場所でその後の人生が決まるのか」という疑問を持つ人が増えています。変化は起きている。ただ、まだ時間がかかります。
よくある質問(FAQ)
Q. インドのカラーリズムはどこからきているのですか?
A. 一つの原因で説明できるものではありません。イギリスの植民地時代に「白人=支配者、褐色インド人=被支配者」という構図が刷り込まれたこと、歴史的な階級制度の中で屋内に住む上位層が日焼けしにくかったこと、広告産業が長年「白い肌=美しい」というイメージを強化してきたこと——さまざまな要素が重なっています。
Q. カースト制度はインドのすべての地域で同じように残っていますか?
A. いいえ、地域によって大きく差があります。私が育ったマハラシュトラ州(プネー)は、インドの中では比較的差別が少ない地域と言われています。北部の州ではより強く残っているとも言われます。都市部と農村部でも実態は異なります。
Q. 北東インド出身者への差別は改善されていますか?
A. 支援体制という点では前進があります。デリー警察には北東出身者への差別・暴力を専門に扱う特別部隊(SPUNER)があり、デリー南部のモーティー・バーグ地区を拠点に24時間対応のヘルプライン(1093)を運営しています。また、NESCH(Northeast Support Centre and Helpline)という民間の法的支援団体もデリーに本部を置き、電話・WhatsAppでの相談に対応しています。一方で、2014年に政府が設置したBezbaruah委員会の勧告のほとんどは今も実施されておらず、インドには人種差別を直接禁止した専門法がまだ存在しません。相談窓口はできつつある、でも差別そのものを違法とする法的根拠がない——というのが現状です。
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この記事は上記のYouTube動画をもとに、シワニが再構成しました。
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