インドの屋台は汚い。道はゴミだらけ。カオスな国。

そのイメージ、半分は本当です。でも、それだけではありません。

日本に来て8年、インド出身の私(シワニ)が2024年に久しぶりにインドへ帰国して気づいたこと——「インドって、こんなに変わってたの?」という驚きを、皆さんにお届けします。

今日紹介するのは、YouTubeで流れてくるインドの動画では見えない「もう一つのインドの顔」です。

この記事のもととなった動画

①キャッシュレス先進国:現金を出すと嫌な顔をされる

2019年にインドに帰ったとき、QRコード決済はそこまで普及していませんでした。

でも2024年に帰国したら、どこを見てもQRコード決済一択でした。

ちっちゃな屋台料理屋さん、道路で野菜を売っているおじさん、リキシャ(人力車)の中まで、QRコードが貼ってある。スマホで読み取って即支払い。「ピコン」とアナウンスが鳴って、「いくら入りましたよ」と音声でお知らせしてくれます。

驚いたのは、現金を出すと嫌な顔をされること。「スマホの時代だよ」と言われました。

私はインド人顔なのに、QRコード決済のアプリを持っていなかったせいで「どこの時代に住んでるの?」という目で見られました(笑)。空港のレストランでも現金が使えないところがありました。

日本でもPayPayなどがありますが、アプリによってQRコードが違ったりしますよね。インドでは「UPI(Unified Payments Interface)」という統一規格があり、どのアプリでも一つのQRコードで対応できます。村のおじいちゃんおばあちゃんもスマホを使っている時代です。

なぜここまで急速に広まったのか。その背景の一つが、2016年の「廃貨政策」です。

当時のモディ政権は、2016年11月、流通していた現金価値の約86%を占めていた500ルピー札と1000ルピー札を突然、法定通貨として使用できなくしました。

大量の現金が一時的に使えなくなったことで、銀行口座への預け入れやカード、電子ウォレットなどのデジタル決済が急増。RBIによると、2016年には電子マネーの取引量が前年比162.5%増加しました。

その後、2016年に導入されたUPIやスマートフォン、QRコード決済の普及、政府によるデジタル化推進などが重なり、インドのデジタル決済はさらに急速に拡大していきました。

つまり、廃貨政策はインドのキャッシュレス化を一気に加速させた重要な転機の一つだったと言えます。

旅行者へのコツ:インドでは大きなお札を崩してくれないことが多いです。ホテルやチェーン店で小銭を作っておきましょう。

②宇宙開発大国:月の南極に世界初着陸

2023年8月23日、インドは月の南極への着陸に世界で初めて成功しました(チャンドラヤーン3号)。

「インドが宇宙開発?」と思った方も多いかもしれません。でもインドは昔から宇宙に力を入れている国です。しかもコストの低さが世界を驚かせました。チャンドラヤーン3号の費用は約7,500万ドル(当時のレートで約75億円)。一方、ハリウッド映画『インターステラー』の制作費は約1億6,500万ドル(約165億円)。

つまり、インドは『インターステラー』の制作費の半分以下ともいえる予算で、2023年に月面への軟着陸を成功させたのです。

月に着陸した順番でいうと、旧ソ連→アメリカ→中国→インド。ただし月の南極に着陸したのはインドが世界初です。

さらに遡ると、インドは2014年にも世界を驚かせていました。火星探査機「マンガルヤーン」が火星の軌道への投入に成功。なんと、火星軌道投入に初回で成功した世界初の国となり、アジアで初めて火星周回軌道への到達にも成功しました。

費用は約450億ルピー、当時の為替で約75億円前後。当時、モディ首相は、インドの火星ミッションについて「ハリウッド映画『Gravity』の制作費よりも安い」と発言。『Gravity』の制作費は約1億ドル、約100億円とされており、この「映画より安い火星探査」という比較は世界的にも大きな話題になりました。

インドには古くから天文学や占星術の伝統があり、太陽や月、惑星の動きを観測し、計算してきた長い歴史があります。

古代から中世にかけて成立した天文学書には、太陽や惑星までの距離や運行を計算するための体系も記されています。もちろん、当時の理論は現代の天文学とは異なります。それでも、空を観察し、天体の動きを数学的に理解しようとしてきた長い伝統が、インドにはありました。

そう考えると、現代のインドが月や火星を目指している背景には、宇宙への関心と天文学の長い歴史があるのかもしれません。

③世界を動かすインド人:グローバル大企業のCEOはインド人だらけ

「インドはITが強い」とは聞いたことがあるかもしれません。実際、インドはITエンジニアの輩出数が非常に多い国で、毎年大量のエンジニアが誕生し、世界中にアウトソースされています。

さらに驚くのが、世界を代表する大企業のCEOにインド人出身者が多いこと。

  • Google(Alphabet):スンダー・ピチャイ
  • Microsoft:サティア・ナデラ
  • IBM:アルビンド・クリシュナ
  • Adobe:シャンタヌ・ナラヤン(2026年退任発表済み)
  • FedEx:ラジ・スブラマニアム
  • Palo Alto Networks:ニケシュ・アローラ
  • 世界銀行:アジェイ・バンガ

現在、Fortune 500企業のトップをインド系CEOが多数占めています。インドの人口は世界の約18%ですが、アメリカのトップ企業のリーダーに占める存在感は、その人口比をはるかに超えています。

私の姉もインドにあるアメリカ企業で働いています。インドは英語が公用語のひとつで、理数系教育が非常に盛ん。競争が激しい分だけ優秀な人が育ちやすい環境があります。エンジニアだけでなく、医療・科学分野でも世界で活躍するインド人が増えています。

「まあ、それはその人たちの手柄で私には全く関係ないんですけど……一応自慢しておきます(笑)」

④生体認証デジタルID:14億人以上が持つアーダールカード

インドでは10年以上前から、政府が「アーダール(Aadhaar)」というデジタル身分証明書を発行しています。

このカードがすごいのは、指紋と虹彩(目)の生体認証データが登録されていること。顔写真・住所はもちろん、本人の生体情報がすべて紐づいているので、カード一枚で即座に本人確認ができます。

インド人のほぼ全員(14億人以上)がこのカードを持っており、銀行口座・税金・収入などの情報もこのIDと連携しています。私も16歳のときに作りました。

アーダールは銀行口座だけでなく、政府の補助金支給にも使われています。インドでは以前、貧困層への補助金が中間業者に横取りされる問題がありました。アーダールが導入されたことで、補助金が本人の口座に直接振り込まれる仕組みができ、腐敗の温床が一つ減ったと言われています。

メリットは大きい一方で、データ漏洩のリスクという懸念もあります。13億人分の生体情報が一元管理されているわけですから、そのリスクは否定できません。ただ、「悪いことをしても逃げるのは簡単じゃない」という抑止力にもなっているのは事実です。

日本のマイナンバーカードに相当するものですが、生体認証が組み込まれている点でより進んだ仕組みと言えます。アーダールは世界最大規模の生体認証データベースとして、国際的にも注目されています。

よくある質問(FAQ)

Q. インドのQRコード決済はどんなサービスがありますか?

A. 「UPI(Unified Payments Interface)」という統一規格のもと、PhonePe・Google Pay・Paytmなど複数のアプリが同じQRコードで使えます。日本のように「このお店はPayPayのみ」という分断がなく、一本化されているのが特徴です。

Q. インドのITが強い理由は?

A. 英語が公用語のひとつであること、理数系教育が盛んなこと、人口が多く競争が激しいことなどが背景にあります。IIT(インド工科大学)はMITと並ぶ世界屈指の難関校として知られています。

Q. アーダールカードは日本のマイナンバーと同じですか?

A. 役割は似ていますが、アーダールは指紋・虹彩の生体認証が組み込まれている点が大きく異なります。本人確認の精度が非常に高く、銀行口座の開設から政府サービスの受け取りまで幅広く活用されています。


シワニの著書もあわせてどうぞ

インド人の結婚観・お金観・仕事観・食文化・日常の習慣まで、日本在住8年のシワニが書き下ろした初の著書です。

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この記事は上記のYouTube動画をもとに、シワニが再構成しました。

シリーズ「インドのよくある誤解」

「インドって、こうでしょ?」を、インド人のシワニがひとつずつほどいています。続けてどうぞ。

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